記事のポイント 

  • 繊維リサイクル事業を展開するナカノの横浜工場に行ってきた
  • 回収された衣服の「次の販路づくり」が課題に
  • 廃棄を前提としない消費文化をどう醸成させるかが問われている

衣料品リサイクル事業を展開するナカノ(横浜)は、企業や自治体から回収された衣服を自社工場で選別し、中古衣料やウエスなどとして再利用・再資源化している。同社のエコムナ横浜工場を見学すると、「回収された衣服の後の販路をどうつくるのか」が課題となっていた。消費者が問われているのは「リサイクルに出したら終わり」ではなく「廃棄を前提としない消費文化を根付かせること」だ。(オルタナユース・sakurako)

­◼︎衣料品リサイクルの現場に行ってきた

不要になった衣服を廃棄するのではなく、リユース・リサイクルするために回収ボックスを設置する事例が、自治体や商業施設を中心に増えている。一方で、回収された衣服の「その後」まで知っている人はどれだけいるだろうか。不要になった物を廃棄するのではなく、資源として循環するという発想は、私たちの暮らしの中で身近になりつつある。それにもかかわらず、その循環を支える現場を実際に知る機会は少ない。

今回訪れたのは、衣料品リサイクル事業を展開するナカノのエコムナ横浜工場だ。同社は古布・古繊維を回収する故繊維問屋として1934年に創業した。以来、回収した故繊維の再資源化・販売から中古衣料品の海外輸出まで、衣料品のリサイクルを上流から下流まで手がける。

ナカノは横浜の他に、神奈川・秦野にも国内に工場を構える

­日本で衣料品リサイクル産業が本格化したのは、明治の近代化以降だという。当時回収されていたのは、衣料品として形の整った状態ではなく、衣類としての役目を果たした後も多様な用途で使い古されたものだった。当時の人々は、着られなくなった衣類を赤ちゃんのおしめや雑巾、草履の鼻緒などに再利用して、徹底的に使い切っていた。

市中から回収された古布は、主に製紙の原材料や工場で油拭きなどに使われる「ウエス」として再利用されたほか、「反毛(はんもう)」という技術によって再び繊維に戻された。反毛とは、古布を機械で細かくほぐし、再び繊維の状態に戻すリサイクル技術だ。再生された繊維は再び糸に紡がれ、新たな衣服の生地として活用される。

こうした時代を経て、アパレル産業は化学繊維の登場によって大きく変わった。化学繊維の生産は土地や天候に左右されないため、衣服の大量生産が可能となったのだ。さらに、1970年頃に日本は高度経済成長期を迎え、人々は手軽におしゃれを楽しめるようになった。

しかし、こうした変化は新たな課題を生むことになった。大量生産・大量消費によって、衣服のライフサイクルは大幅に短くなり、まだ着られるような衣服も廃棄されてしまう。これは今日のアパレル産業が抱える問題につながっている。

◼︎古着輸出・ウエス・反毛で循環を支える­

現在、ナカノのリユース・リサイクル事業は、海外向け古着輸出、ウエス、反毛を三本柱とし、その中でも海外向け古着輸出が全体の半分を占めているという。

工場では、企業や自治体から回収された古着を200種類以上の項目で一点ずつ手作業で選別する。仕分けされた大量の古着は、プレス機で圧縮梱包された後、国内外に輸送される。

首都圏の各所から多種多様な古着が集まる

海外に輸出される古着の行き先はアジア圏の比較的温暖な国が中心であるため、流通するのは春服や夏服が多いという。工場などで機械の油汚れの拭き取りなどに使用されるウエスも、水や油の吸収性に優れた綿素材の古着を原料としている。そのため、冬物の衣料品は再流通の販路を見つけにくいという課題を抱えている。

このようにリユースやウエスへの使い道が閉ざされた衣料品は、反毛によって再び繊維の状態に戻される。綿のようになった繊維はベルト状に加工され、自動車の断熱材として活用されている。資源を循環させる取り組みとして、別のものづくりに役立てられているのだ。

反毛後の繊維の色味や質は素材ごとに異なる

◼︎今後の課題は出口を開拓すること­

こうしたリサイクルの取り組みが存在するものの、新しく生産される衣服の量は、依然として私たちが消費する量を大きく上回っている。日本国内において、生活者が手放した衣服のうち、再資源化される割合はわずか7%ほどにとどまるのが現状だ。

海外向け古着輸出、ウエス、反毛をリユース・リサイクルの三本柱として掲げるナカノだが、藤田修司取締役リサイクル部統括は、リサイクル事業の今後の課題として「出口開拓」の必要性を強調する。

「日本の衣料品リサイクルを前進させるための最大の課題は、『出口を開拓すること』です。受け皿がないまま回収量だけが増えても、行き場のない衣服は結局廃棄され、事業としても立ち行かなくなってしまう。だからこそ、アパレル業界としてリサイクルを真に推進していくためには、第4、第5と新しい出口を増やして行かなければならない」(藤田取締役)

さらに、藤田取締役は、アパレル業界全体で環境負荷を低減していくためには「生産量の適正化」が不可欠であると同時に、衣料品そのものの設計についても指摘する。現在流通する多くの衣料品は単一の素材で作られた製品が少なく、リサイクルの工程において、ボタンやジッパーといった付属物を取り除く作業にコストがかかっているためだ。

ナカノでは、リサイクルの新しい出口として、回収した衣料品を主原料とした特殊紡績手袋「よみがえり」を生産・販売している。その他にも、俳優やモデルとして活躍する水原希子氏とコラボレーションしたリサイクル素材のファッションアイテムの販売なども過去に行っている。

💡 ユースの視点

◼︎消費文化から「エコソフィー」な社会を目指す

ナカノでは、「エコノミー(経済)」と「エコロジー(環境)」を人の知恵によって両立させる理念として「エコソフィー」を提唱している。エコソフィーを社会全体で実現していくためには、アパレルメーカーやリサイクル事業者の取り組みに加えて、私たち生活者の行動変容が必要不可欠だ。

今回の工場見学で最も印象的だったのは、工場に運び込まれる大量の衣料品が、人の手によって選別されているという事実だ。私たちは、不要になった服を回収ボックスに入れた時点で「環境に良いことをした」と満足してしまっていないだろうか。「リサイクルに出したから終わり」で思考を停止するのではなく、生活者自身がその後の過程を知ることが、エコソフィー実現に向けた第一歩となる。

例えば、リサイクルの出口が狭い冬物の衣料品の手放し方を見直したり、購入時から素材や長く着られるものを選んだりといった、具体的な行動の変化につながるはずだ。

古着文化が若者を中心にカルチャーとして根付いてきたように、「廃棄を前提としない消費文化」を社会全体のスタンダードとして広げていくことが、今日のアパレル業界を取り巻く課題を解決するにあたって重要なのではないか。